「医療紛争の実態(放射線事例をふまえて)」
座長 奥村恭己
第12回 岐阜県放射線技師学術大会において、水島綜合法律事務所 弁護士 水島幸子先生に、「医療紛争の実態(放射線事例をふまえて)」の内容で講演をして頂きました。先生は、中央大学大学院博士前期課程法科研究科を御卒業され、昨年、大阪西天満において「水島綜合法律事務所」を開設されました。先生は専門分野が医療紛争という関係上、独立行政法人国立病院機構や看護協会の顧問弁護士に就任されておられます。また、今回のように医療関連学会、セミナー等においても多数講演されておられます。先生のホームページを紹介しますと「医療現場が直面している様々な課題に対して、患者の方々のために医療現場がどうであるべきか常に念頭におき、医療紛争事案における医療機関側の代理人として、医療従事者とともに、医療事故直後の対応や紛争解決に日々尽力されておられます」
1999年の横浜市立大学附属病院の手術患者取り違え事故をきっかけに、全国各地で医療事故に関する報道が相次ぎ、医療安全が問題視されるようになりました。一般的に、安全な医療現場はなく、医療事故の起こらなかった状況を安全と定義しているのが現状ではないでしょうか。このように、医療をとりまく環境が大きく変化しつつあります。医療現場に向けられる患者の評価はかつてなく厳しいものとなっています。私達が働く放射線部門もまた、例外なく医療事故防止に向けた取り組みが必要とされてきています。
医療に関連して生じた事故を「医療事故」、過失によって生じた医療事故を「医療過誤」
患者・家族・遺族が病院・医療関係者が損害賠償等を求めたりすると「医療紛争」、裁判を起こすと「医事裁判」になります。医療事故と責任では、医療従事者の負担する責任として、@刑事上の責任:業務上過失致死傷罪、殺人罪、傷害致死罪、傷害罪、A行政上の責任:免許取消、業務停止。B民事上の責任:損害賠償責任。さらに、マスコミ等によって報道・批判される社会的、道義的責任も発生することがあります。
講演の中で、先生が担当された具体的な「医療紛争」の事例として、脳出血で昏睡状態の患者に対して、看護師が挿管チューブと酸素延長チューブを誤って連結し、その後患者は、呼吸困難により死亡した。さらに、同病院は異常死の届出を2週間も通報しなかった。警視庁は、事故と患者死亡との因果関係とともに、通報が遅れた経緯についても捜査開始した。その後、看護師のみ書類送検(挿管の際、先輩に「何か足りないんじゃない?」と指摘されたが聞き返せなかったと言う)→酸素延長チューブの改良、職場に人間関係の問題が存在→不起訴処分。先生の弁護により、医療機関側の事故後の対応や職場での人間関係の存在等が認められ不起訴処分となりました。
さらに、講演の内容で興味深かったものに、私達放射線技師が、患者に放射線を照射する行為は違法かという問いでは、患者の身体に対する侵襲は「傷害」で違法であるが、患者の同意があり、正当な医療行為である場合に限って、違法性が阻却されること。
損害賠償額は、死亡した場合と障害が残った場合では違い、障害が残った場合のほうが高額になること。また、裁判が長引くほど賠償額に金利が発生するため、結審するまでに金額が多くなってしまうので、和解が勧められる事例が多くあること等、実際の医療紛争での医療機関側の弁護士さんからの大変貴重なお話しでした。先生の講演内容が90分から2時間程の内容であり、最後は内容を端折る形になってしまいましたが、アッと言う間に予定の時間が終わってしまいました。
私たち岐阜県放射線技師会会員のために、大変御多忙の中、テンポ良く、分かり易く。興味使い内容の講演をして頂いた水島先生の益々の御活躍と御健勝を祈念して、座長集約を終わらせていただきます。