脊椎領域におけるDWIの試み
大垣市民病院 診療検査科 機能診断室
○石川 照芳 古川 雅一 安田 鋭介 矢橋 俊丈
奥田 清司 中村 学 恒川 明和 市川 秀男
【目的】躯幹部のDiffusion
Weighted Imaging(DWI)画像における有用性・可能性について様々な報告がある。今回我々は脊椎病変、特に腰椎部において臨床的評価(良・悪性の鑑別など)の可能性について基礎的検討を行ったので報告する。
【使用機器】Signa TwinSpeed
1.5T ver9.1(GE)
【撮像条件】SE-EPI法、TR:2300、TE:83、FOV:40、matrix:128×128、slice厚:4mm、gap:0、slice断面:axial
【対象】健常者9例(9椎体)、圧迫骨折 (病的を除く)18例(20椎体)、骨転移7例(12椎体)、脊椎炎2例(2椎体)である。
【検討項目】次の項目におけるApparent
Diffusion Coefficient(ADC)値(10-3mm2/sec)を比較検討した。 1.MPG印可方向 (isotropicと各スライス方向:SI、AP、RL) 2. b値(300-1000) 3.健常者における椎体(性別間) 4.健常椎体と病変部
【結果】 1. isotropicと各スライス方向のADC値に有意差は認められなかった。また、isotropicに比べ1軸方向のみでも画像(質)に差は認めなかった。そこで撮像時間の短縮を図るため、isotropicに最も近い値を示していたSI方向でのMPG印可による撮像が妥当と考えられた。 2.高 b値になるに従いADC値は低下する傾向にあった。また、脊髄液の描出が抑制されるため、高b値での撮像が望ましいがnoiseの影響を考えb=800での撮像が適当と考えられた。 3.健常者における椎体部のADC値は、男性0.446±0.075、女性0.508±0.075であり男女間に有意差は認められなかった。 4.
ADC値は正常椎体に比べ圧迫骨折群 1.330±0.346、骨転移群1.017±0.205、脊椎炎群1.235±0.346といずれも有意に高値を示した。また、圧迫骨折群は骨転移群に比べ高値を示し有意差(p<0.01)を認めた。
【考察】腰椎部におけるDWI撮像は良・悪性の鑑別などの可能性が示唆された。しかし急性期の圧迫骨折部で転移巣と同様の高値を示し、良悪性の鑑別が困難な例も経験した。今後症例数を増やし得られたADC値の解釈や、撮像シーケンスなども含めさらに検討を加えていく必要性があると思われた。