講演2
上腹部領域でのCTとMRIの有意性
京都市立病院 小倉明夫
上腹部の画像診断に使用するtoolとして、現在ではCT、MRI、超音波、核医学、血管造影等がある。この中で、CTは従来スクリーニングから精密検査まで幅広く使用されてきた。近年MDCTの普及により、短時間の呼吸停止で上腹部から骨盤部まで撮像可能となり、呼吸停止の困難な被験者の画質が向上した。CTは急性腹症の診断に重要な空気と石灰化の描出に優れることから、緊急検査には不可欠である。
一方MRIは当初、腹部のような呼吸による動きがある領域には適していなかったが、その後の高速撮像法の出現とアレイコイル等によるハ−ド面の開発により、画像が飛躍的に向上し、ル−チン検査として、用いられるようになってきた。特にMRIは組織コントラスト分解能が高い事から、T1,T2強調画像はもとより、グラドエントエコ−系列のin-phase,
out of phaseの利用や、脂肪抑制、水強調の画像により多くの診断情報量をもたらした。またSPIOに代表される肝特異性造影剤により転移腫瘍の検出も向上している。しかしながら、MRIは装置の性能もさることながら、撮像シーケンスやパラメータの選択により画質が大きく影響されることも認識すべきである。
腫瘍の血流動態を利用してDynamic studyが行われるが、これも、CT、MRI両者で行われている。どちらのモダリティが主に選択されるかは、装置の性能や予約の状況等により施設により異なるのが現状であるが、臨床的には2mm以下の腫瘍の検出率はMRI-dynamicの方が優れるとした報告が多い。この両モダリティの検出能に関して、物理特性を中心に比較を行ったので報告する。
いずれにしても、各モダリティの特性を十分に把握した上で、臨床目的により使い分ける事が必要であると考える。