座長集約
会員発表3「放射線被ばく・管理」
岐阜大学医学部附属病院 放射線部
岡田 富貴夫
このセッションでは、おおまかに放射線管理に関する演題が3題と血管造影検査装置における患者被ばく線量に関する演題が2題発表された。
第1席は放射線管理学教育の現状と問題点について授業効果並びに学生の理解度についての調査報告であり、臨床実習に迎える施設の会員にとっては興味深いものであった。臨床実習において学生は、疾患・画像・装置取扱い・患者様接遇等に対して重点がおかれるわけであるが、放射線管理に関しても法律に則った放射線施設の運用がなされているわけであるので線量測定等も含めて臨床実習の中に取り入れて頂く必要があると思われる。
第2席は個人被ばく線量管理プログラムを市販のアプリケーションソフトを使用して独自に開発を行なわれた報告であった。従来の紙ベースでの報告書の管理では管理者の作業の繁雑さが膨大で報告書の有効活用という面では十分になされていなかったが、報告のあった管理プログラムでは測定メーカーからの測定データの取り込みを行ないその後様々な利用を可能にしており、また自作プログラムの強みでもあるカスタマイズが可能となっている。今後セキュリティー等について課題が残ることも報告されているが非常に優れたプログラムであり今後さらなるプログラムの改良及び機能の向上が望まれる。
第3席はガラス線量計を用いた漏洩線量測定の使用経験の報告であった。平成13年の法改正に伴い積算型線量計による漏洩線量測定が可能となり測定方法の選択肢が増えた。今後管理区域境界等における漏洩線量測定にガラス線量計が使用される機会が増える事も十分に考えられるが、漏洩線量測定を行なう場合においてサーベイメータを用いる方法とガラス線量計を用いる方法ではそれぞれの長所、短所があり各々の特徴を十分理解した上で使用を行なう必要がある。
第4席は血管造影装置における面積線量計の読み値と実測値との比較検討が行なわれた。現在血管造影装置においては、多くの装置で面積線量計などを用いて照射線量の表示が可能となっているがその値が患者皮膚表面線量とはならず、発表においては装置表示値と患者皮膚表面線量との関係を透視及び撮影時において係数として各々の装置で求めることでより正確に算出しようとの試みであり興味深いものであった。
第5席は面積線量を用いた心臓カテーテル検査時における被ばく線量の統計と題してCAG・PCI、EPS及びアブレーションでの被ばく線量の検討報告が行なわれた。CAG・PCIにおいては患者被ばく線量は撮影モードで、EPS・アブレーションでは透視モードが大きく関与しており各々の検査・治療において使用する撮影・透視条件の最適化が重要である旨の報告であった。第4席及び第5席の報告も含めて特に血管造影におけるIVRでは患者被ばく線量が多くなる事から、近年治療に伴う皮膚障害の報告も散見されるようになってきている。面積線量計はその値をリアルタイムに表示できることから自施設の被ばく線量の把握を行ない日々の診療に有効に利用する事が重要であると考えます。