今年は例年より桜の開花も遅れ、肌寒い日が続きましたが、当日は暖かい行楽日和のなかで平成16年度の岐阜県放射線技師会学術大会が開催されました。今回、このセクションでは一般演題として6題の会員発表がありました。内容としてはそれぞれ症例報告3題、脊椎領域においてのMRIの新しい撮像方法の試み3題といずれも興味深い発表でありました。

 東濃厚生病院 深沢先生の発表は短期間で自然治癒した頸椎ヘルニアと胸髄原発の悪性リンパ腫、県立多治見病院 宇地越先生の発表は、多発性の硬膜内髄外腫瘍とともに比較的まれな脊髄疾患の症例を報告して頂きました。近年はどの施設においても脊髄の画像診断法として、骨の影響がなく、コントラスト分解能のよいMRIが中心であり、以前は診断に苦慮してきた疾患も、MRIの普及により描出が容易になってきました。そして、今回のような疾患においては経過観察が必要であり、MRIのみで経過を追う場合が多くなってくると思われます。

 木沢記念病院 檜山先生の発表は、診断に苦慮した脊髄腫瘍のPET検査が有用であった症例報告があり、肺がんなどの悪性腫瘍の早期診断や再発の有無、さらには治療効果判定に応用できる検査薬のFDGが、今後delivaryシステムにより供給が可能になると脊髄領域においても益々PET検査が増えてくると思います。

岐阜市民病院 坪井先生と大垣市民病院 石川先生の発表は、日常のMRI検査において、Diffusion Weighted Imaging(DWI)画像の有用性についての発表で坪井先生は症例を用いて良悪性の鑑別の有用性を認め、石川先生の発表ではADC値の比較検討を行い圧迫骨折と転移性脊椎腫瘍で有意差を認めた。また、発表のなかでは男女間の有意差は認めなかったが、会場からの質疑で高齢者におけるADC値の検討が課題であるという意見が出された。また、高山赤十字病院 岩佐先生の発表も、従来の撮像法のHASTE法とMRIの更新により使用可能になったFISP法との神経根の描出能の比較検討の行い、下部腰髄で有意差があり、時間分解能もよく有用な撮像法である。今後は益々臨床的評価が求められ、脊椎のル−チン検査に於いてDWI画像などの新しい撮像の試みや、さらに撮像シ−ケンスなどの検討が必要であると思われます。

 以上6題の発表がありました。

今回は「脊椎疾患の画像診断」というテ−マとして一般演題を行いましたが、それぞれ興味ある発表でした。まとめとしましては、今回の発表のなかでも、脊椎疾患の診断にはMRIが中心的な位置を占めており、今後DWIなどの新しい撮像方法の試みやPET検査など他のモダリティを用いて早期に異常の検出や質的診断が可能になっていくと思われ、その有効な使い方を十分把握し、必要な検査を適切に施行することが大切であると思います。

 

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